つくるルポ!

森の手箱tebacoに入れたら楽しいか

ウッドデザイン賞 2023で、最優秀賞をいただいた「森tebaco」。林福連携プロジェクトのアウトプットとして誕生した森tebacoシリーズは、「箱」をデザインテーマとしたプロダクトです。当初よりさまざまなデザイン展開が考案されていましたが、実際に商品として売り出す準備ができているのは、現在のところ、時計とカレンダーです。そこで、中を差し替え可能なカレンダー森tebacoの利用展開を模索するワークショップを実施しました。

森tebacoの魅力

「箱」は奈良時代に宗教のための用具を納める容器から始まったとされ、今日まで用途に応じて様々な形、サイズが作られてきました。なかでも手箱は、貴人が大切なものを身近に置いて愛でるためにつくられ、蒔絵や螺鈿の漆器、寄木など、細工の美しい工芸品が数多く作られ、今に伝わっています。

美しい箱はそれだけで人を魅了し、箱にふさわしいものを入れたい、あるいは大切なものを入れるのにふさわしい箱がほしいと人びとは考えました。

両手でコロンとつかまえることのできる、このやさしい森の手箱も、使う人のそばで、大切なモノや思い出を預かる箱として長く愛用されてほしい。そこで、カレンダーリフィルを抜いたフレームに何を入れたら良いか、どんな利用シーンを期待できるか、検討します。

さわり心地のよい森tebacoのサイズをあらためて確認。小さめの窓には、何が映るだろうか。

植物素材をレイアウトして、季節の記憶を残す

2020年~2023年のコロナの流行による外出制限や、植物学者・牧野富太郎博士をモデルとした朝ドラなどを背景に、植物雑貨がインテリアに広く取り入れられるようになり、流行が続いています。いつもの散歩道や、旅行先で目に止まり拾ってきた植物たちを、しばらくの間そばにおいて楽しむために、森tebacoをつかうのはどうでしょうか。
参加メンバーは、紅葉の時期に拾い集めた落ち葉を、乾燥シートに挟んで保存しておいたものや、木の枝、実などを持ち寄りました。集まった落ち葉や木の実などを広げて、「きれい!」「持ち寄るといいね」「親子のワークショップとして開催しても楽しそう!」と声があがります。

ペンと落ち葉で絵を描いてみる

参加メンバーのひとりに、ペンで描いた人の横顔や身体に、色とりどりの落ち葉を重ねてもらいました。絵の一部を先に描いておいて、落ち葉で絵を完成させてもらう、というようなワークショップは良く見かけますが、簡単でありながら、多様な表現が可能で、子どもから高齢者まで、それぞれに楽しめそうです。
女の子の絵に落ち葉を乗せてきれいなドレスを着せてあげたのに、箱を立てたら、葉っぱが全部下に落ちて、裸になってしまうというハプニングに一同大爆笑! 空間にわざと遊びを持たせておいて、箱を叩いて葉っぱを動かす、というような、ゲーム性のある表現も考えられます。

落ち葉だけでなく、他の素材も試してみる

その人にとって大切な物語をとっておくための箱、と考えれば、たとえば飼い犬や猫の思い出もこの小さな箱にとっておけると良いかもしれない、という話題があり、さっそく飼い猫のブラッシング時に取れた抜け毛を詰めてみました。圧縮してフエルト状にするとよい感じに仕上がりそうです。他にも石や貝、シーグラス、つけなくなった思い出のアクセサリーなど、もう少し深さがあればディスプレイボックスとしていろいろな活用が可能であることを確認、またこうしたワークショップにも、販路の新しい可能性があると感じました。

コンテンツ挿入部の深さ(厚み)に調節機能がほしい

2時間ほどの作業を経て、森tebacoの「箱」としての可能を確認することができました。柔らかくて太い木の枠があることで、内側に何を入れても映えること、自立するので好きな場所にさっと移動できるところが魅力である一方で、もう少し自由度がほしい。 コンテンツ部の厚みを調節できるとさらに可能性がひろがるね、という点でメンバーの意見が一致しました。今後の展開も楽しみです。

季節の思い出をディスプレイする森tebacoたち