林業×福祉×デザインの力で、福祉作業所の利用者さんが「誇りをもって従事できる仕事をつくること」を目指し、令和2年度からスタートした林福連携事業では、これまでいくつもの製品開発に挑戦してきました。
一般消費者に手にとってもらえる、魅力ある製品を開発したい。
この事業は林野庁の支援を受けて始まった事業で、「社会福祉法人幸仁会 川本園」が開発・生産を担当し、「NPO法人木育・木づかいネット」のネットワークから多様な知見やデザイン、アドバイスを得て展開してきたものです。「社会福祉法人幸仁会 川本園」は、木工を得意とする作業所としてよく知られており、主に埼玉県産のヒノキを使った、丁寧なモノづくりには定評があります。地域材を活用した温かみある製品群は、官公庁や企業に導入されることも多いのですが、「もっと、一般の消費者にも〈欲しい！〉と思ってもらえるような製品を生産して、利用者さんも、職員も、ここで働く人たちみんなのやりがいを創出したい」そう、理事長の田中初男さんは考えていました。
（株）生活の木 との出会い
転機になったのは、アドバイザーとして川本園を訪れた佐藤岳利氏（元ワイス・ワイス社長、現佐藤岳利事務所・代表）からの提案です。「一般市場では流通を託すパートナーが重要だ。このプロジェクトの意義を理解してもらえる'ソーシャルグッド'な企業と組むのはどうか」とアドバイスを受け、出会ったのが、（株）生活の木です。
「生活の木」は、1970年代より日本にハーブや精油、植物油など、国内外の自然の恵みを調達し、アロマテラピーを普及・啓発してきた、草分け的な存在のブランドで、「自然」「健康」「楽しさ」を提供することで、心身ともに健康で美しくあるためのWellness（ウェルネス）＆Well-being（ウェルビーイング）なライフスタイルを提案することを経営理念とされています。
「川本園」、「木育・木づかいネット」、「生活の木」の重永社長、アドバイザーの佐藤岳利氏とで、会議を重ねるなか、もともと「生活の木」では福祉作業所とコラボした石鹸の販売などを行ってきた経験があることや、「生活の木」のお客様が木製品を好む傾向があること、さらには、ヒノキの製品をよく手にとってもらえることなどについて知ることができました。林福連携事業についても深くご理解をいただけて、コラボ製品の開発に向けた模索がはじまります。
自然はそれぞれ。
ひとつひとつの違いが愛らしい「Hinokiアロマボール」の誕生
福祉作業所の利用者さんには、得意なこと、不得意なことがあります。さまざまな可能性を探る中で、メンバー全員が「これなら製品までもっていけるのでは？」と、たどりついたのは、アロマのための「木の玉（もくたま）」を開発することでした。ヒノキの木の玉は、子どもの遊具や、お風呂用アロマグッズとして全国の木工作業所でたくさん作られていますが、アロマオイルを垂らして使う、テーブルや棚において美しく心地よいサイズのヒノキのボールを作ってみることになったのです。
しかし自然のものは、一つとして同じものがありません。たかが木の玉、されど木の玉です。節があることはどのくらいまで許容できるのか、ひとつひとつのサイズはどのくらい同じでなければならないのか、木ならではの良さを表現できる仕上げはどうするか・・・、何度か製品サンプルをつくってはやり取りが続きました。
そして顔合わせから約半年後、ついに、「Hinokiアロマボール」が「生活の木」の店舗に並びます。
大きさも、品質も、スペシャルなもくたま、「Hinokiアロマボール」の誕生です。まずは、「生活の木」の主要な16店舗での販売開始です。
利用者の皆さんが、「すごい所で売っているんだーーーー！」と喜んでおります。
（企画・事務担当「NPO法人 木育・木づかいネット」の多田知子さんの声）
「Hinokiアロマボール」、発売初日に店舗に行って見てきました！
付属のウッドリングにちょこんと乗った「Hinokiアロマボール」は、周りの美しいアロマの瓶やパッケージと並ぶ中で、「わたしは木だよ！」というような存在感を放っていました。嬉しくなって、すぐにその様子を川本園さんにお知らせしたところ、
"利用者の皆さんが、「すごい所で売っているんだーーーー！」と喜んでおります。"
と、また嬉しい声が返ってきました。
このプロジェクトの事務的な担当の私は、言ってみれば口しか動かしていませんが、こんなにも嬉しい。実際に手を動かして製品を作り上げてくださった、川本園の利用者さんたちの感慨はひとしおなのではないかと想像しました。この先も、「生活の木」のお客様にも、スタッフのみなさんにも、末永くかわいがってもらえますよう、心から願いながら、店舗をあとにしました。